ザ・ライフ・カムパニイ
ザ・ライフ・カムパニイ

創造と人間性

ブロードウェイ・ミュージカル「パイレーツ・オブ・ペンザンス」に出演している俳優の話

ブロードウェイでは一流の俳優は飲んだり食ったりして騒ぎません。
よい舞台のために体調や精神のコンディションを整えるため、自らの自己管理に務めるのです。
テンションの高い高度な舞台を作るためには、絶対に必要なことなのです。
そうでなければすぐにアンダースタディに、役を譲らなければならなくなります。ですから一流の俳優は、普通の良いリズムある生活を大切にします。
こうしてレベルの高いブロードウェイ・ミュージカルは創造されていくのです。
酒場で飲んだり食ったり演劇論をぶったり、異性にうつつを抜かしている俳優は、そういう浮いた雰囲気に浸りたいだけの三流の俳優なのです。

ブロードウェイの舞台観劇後、楽屋口にはファンがお目当ての俳優を待ち続けていました。まもなく分厚いドアが開きメインのキャストがメイクも落とさずジーパンとリュックで出てきて、にこやかにファンの方と挨拶を交わしていました。それも一人のごく普通の人間としてさりげなくファンと懇談していました。そしてさりげなく手を振って帰途についていったのです。

明日の舞台にそなえゆっくりとクールダウンをし、静かに自分自身のエネルギーを再びためるかのように・・・。

良い作品は一人一人の俳優のきめ細やかな自己管理から生み出されることを垣間見たシーンでもありました。

イヴァン・ハート(カナダのプリマバレリーナ)

芸術は人々を勇気づけ、困難や恐怖を乗り越える力を与えるもでなくてはならないはずです。人々が忘れているもの、「生命」の不思議さや、人を愛する尊さなどを思い出させ、気づかせる働きと言えるかもしれません。

私たちが舞台に立って俳優の仕事をする時、私たちの心を占めているものは何でしょうか。おそらく、「段取りを間違ってはいけない」「音をはずしてはならない」「もっとこういう見せ方をしなければ」などと、自分自身に関することに心はいっぱいになっているのではないのでしょうか。自分がパンパンになっていて、なぜ私は舞台に居るのかと自分自身を省みる余裕はなかなかもてません。

しかし、舞台の持っている力とは、そんな小さなものではありません。俳優が自分自身のことから出て、人々への思いを開いていけば表現の世界は大きく変わっていくものです。

イヴァン・ハートさんの言葉は創造する側の使命感のある温かい言葉です。その目に見えない思いが観る人にとって力のある芸術を、創造していくのではないかと思うのです。

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